
キャラクターではなく、人間を書く
2013/07/08
キャラクター小説と言われるライトノベルですが、読んでいてもどうも心に残らないものが多いのではないでしょうか。
それは人間ではなくキャラクターが動いているからです。このキャラクターはテンプレートの継ぎ接ぎでできているからではないでしょうか。
テンプレートを使っているから、人間じゃない
キャラクターの作り方ではキャラクターの作り方をお話しましたが、これはあくまでキャラクターです。人間ではありません。
ツンデレ美少女というキャラクターがいます。大きな瞳で栗色の髪の毛、色白の肌なんていう「個性」はあるのに、心には残りませんよね。
ツンデレ美少女がツンデレ美少女である理由が欠けているからです。
人間を作るのは過去
人間は生まれたときから性格が決まっているわけではありません。生活環境と人間関係が、その人間を作り上げるのです。
では、ツンデレ美少女がどうしてツンデレ美少女になったのか、考えてみましょう。
大きな瞳で栗色の髪の毛、どこの生まれでしょうか。ここでは例として、秋田美人を想像します。
顔立ちだけでいう美人というのは、遺伝子の影響を受けますが、今回例にとる秋田美人は、雪国の生まれです。物語の舞台は東京で、彼女は東京に引っ越してくるわけです。
転校を繰り返すごとに人との付き合い方が上手くできなくなっていた。大きな理由は、幼稚園まで田舎でほとんど子供がいないような場所に生まれ、一緒に遊んでくれた男の子だけが唯一の友達で、彼に甘やかされた。彼との遊び方だけしか知らない女の子は、転校した先々でも、自分を甘やかしてくれると思って、つい偉そうな口を聞いてしまう。男の子には持て囃され、女の子からは距離を置かれ……その絶妙な立ち位置が、彼女をツンデレ美少女にしたのです。
――こうやって考えていけば、単なるキャラクターから、人間へと生まれ変わるのです。
過去を語る上で最も簡単なものが「失敗」
上の例の秋田美人なら、どこにでもいそうな人間ですよね。
その後の人間を創り上げていく上で一番影響を与えるものが失敗です。
「発表会でセリフを忘れて笑われた」という具体的な失敗でも構いませんし、上記のように「つい偉そうな口を聞いてしまう」という言葉では簡単に表せないような微妙な失敗談(本人は失敗だと思っているかどうかで、また話の方向が決まっていきます)でも構いません。
トラウマ経験、成功談
人間は失敗をいつまでも覚えているもので、人間を創り上げていく上では欠かせませんが、それ以外にも人間を創り上げていく上で重要な項目があります。
例えばトラウマです。昔、動物園で牛に噛まれた経験がトラウマとします。主人公が牛のような体格だったら? これが主人公を嫌う原因になります。
反対に成功談もあります。成功談を使うと、「過去の栄光」や「願掛け」という使い方もできます。
行動原理(信念)を作る
人間であるキャラクターを動かすのに、もう一つ大きなものがあります。
「行動原理」がしっかりしている、ということです。
これは未来に大きく関わります。
簡単な例で言えば、「昔、敵に母を殺された」というのがあります。「敵を殺すのが目的」になり、主人公は他が目に入らないくらいの猪突猛進な性格になります。ここで可愛い女の子が出てこようが、裏の取引を持ちかけられようが、行動原理がしっかりしていれば、主人公がこれらのことを跳ね除けるのは想像ができます。
ですが、この可愛い女の子が、実は同じ人に母親を殺されていたら? 協力関係が生まれますよね。「敵を教えてやるから密売に協力しろ」なら協力するでしょう。これも行動原理の一つです。主人公は「敵を殺すためなら手段を問わない」のです。
もうちょっと細かい例も上げます。例えば、「とてつもなく几帳面」というキャラクターの場合、「人間関係のあらが見える」ので「他人の揉め事にも介入せざるを得ない」という設定を作ることもできます。これも「几帳面」という個性が、行動を決めるのです。